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このインタビューは、仙台経済界2013年5-6月号に掲載された原稿をホームページ用に再編集したものです。

観光・農業・産業・福祉で、定住化促進のため安全・安心な町を創りたい
蔵王町 町長 村上 英人氏

むらかみ・ひでと 1952年蔵王町平沢生まれ。仙台育英高校、東京観光専門学校卒業後、宮城蔵王観光(株)勤務。1992年から蔵王町議会議員3期。2004年10月から蔵王町長。宮城県砂防協会会長、宮城県温泉協会会長など兼務

蔵王国定公園の国有地が町の3分の1を占める蔵王町は、仙台から車で約40分というアクセス性抜群の町。県内トップの農業生産高を支える畜産、果実、米は依然、好調だ。近年、遠刈田温泉やエコーラインを始めとした観光客の伸びが止まり、高齢化と少子化で居住人口も減少気味。しかし、東日本大震災では、多くの被災地住民も受け入れるなど、地震に強い町をアピールした。町長就任3期目に入っている村上英人町長に、今後の課題と展望を聞いた。

子育て支援などきめ細かく

町政3期目に入っています。まず、2期8年の成果と残されている課題について伺います。

村上町長 この8年間の成果の一つは、財政の立て直しです。町債残高は、2004年当時、一般会計と特別会計・企業会計合わせて149億304万円ありましたが、2012年度見込みでは、105億9014万円と、一般会計で23億5962万円、特別会計・企業会計で19億5328万円の合計43億1290万円を返済しました。この圧縮した数字は大きいと思っています。このほかの成果としては、子育て支援施策、子ども達に夢と希望を与えるイベントなどの開催、環境保全・循環型地域社会形成への取り組み、蔵王ブランド化と環境に優しい農業の推進、さらに交流人口の増加対策です。

子育て支援施策の具体的な内容は何でしょうか。

村上町長 小学6年生までの医療費を無料としました。2012年10月からは、中学3年生にまで拡大しています。また、すこやか養育助成金として、第3子以降を出産した家庭に、年間50万円、双子には100万円を補助しました。実はこの施策を始めてから、第3子が増えました。さらに、あったか支援金を、母子家庭と父子家庭へ補助しています。父子家庭への補助は、全国でもまれです。さらに、中学3年生へのインフルエンザ予防接種を無料で接種して、受験などに万全の態勢で取り組んでもらうよう行政として支援を行っています。また子どもが出生したとき、4万8000円分の紙オムツ券も支給しています。

子ども達に夢と希望を与えるイベントというのは。

村上町長 東北楽天イーグルスのイースタン試合の誘致やプロ選手による野球教室などです。その影響か、昨年11月に行われた宮城県中学校秋季選抜野球大会で、町立の円田中学校が優勝候補の秀光中学校を破り、初優勝を飾りました。全国中学校スキー大会も昨年開催しました。また今年で3回目となります日本の蔵王ヒルクライムには、全国から自転車愛好家1100人が参加して、日本一の高低差に挑戦、エコーラインを走り、蔵王山頂を目指しました。今年は5月19日に開催しますが、2000人の参加を予定しています。

政策実施率は81・5%

環境保全・循環型地域社会形成への取り組みとしては、どのような施策を展開しましたか。

村上町長 蔵王町は、4年前に環境保全宣言の町を掲げました。循環型社会を目指すものですが、看板だけではいけません。その代表的なものが、「蔵王爽清牛」です。これは、町内の工場から排出される茶殻と乳清を混合飼料として与えた交雑種の肉牛で、赤身でおいしい肉ができました。さらに、農産物の品質を保証する「蔵王ブランド」認定制度を12年11月からスタートしました。第1弾として、環境保全米と直播栽培米を手掛ける町内の2団体、1個人を選び、農産物の付加価値を高め、他の産地との差別化や販売促進につなげます。蔵王町は実は、みやぎ生協の約70%の鶏卵を供給しているほどの養鶏の町です。その鶏糞を炭にして、田畑に混ぜる土の改良研究を企業とスタートしました。この炭を使うと、セシウム濃度が3分の1にまで減少するという研究結果も出ています。

交流人口の増加対策は、どの地方自治体でも急務です。

村上町長 農水省、文科省、国交省3省の連携事業で、修学旅行に農業体験を組み込みました。開湯400余年の遠刈田温泉への宿泊と、農業などを組み合わせた新たな取り組みです。昨年は5校が蔵王町を訪れました。今後も、農業と観光を連携した取り組みを検討します。

東日本大震災では、災害に強い町をアピールしました。

村上町長 震度6強を記録しても、幸い人的被害はゼロでした。道路の亀裂など20億円程度の被害は受けましたが、県内で一番早く復旧できました。みやぎ蔵王別荘協議会では、被災地からの受け入れを早々に決めてもらうなど、大変感謝しています。

2008年度から12年度までは第四次蔵王町長期総合計画の前期基本計画期間でしたが、施策実行の自己評価は。

村上町長 保健・医療・福祉、教育・文化・スポーツ、環境・生活基盤、産業、町民参加・安全・行政運営のジャンルで取り組んだ92項目のうち、計画より早期または内容を充実して実施またはほぼ計画通り実施したのが75項目で、実施率は81・5%でした。

日本一元気な町を全国に発信

人口減少や定住化の課題は、蔵王町にとっても大きな問題です。その中で、遠刈田温泉小妻坂地区で、今年度から民間企業や福祉団体がなどが主体となって、「山水会地域福祉エコビレッジ構想」をスタート、先導計画の特別養護老人ホームが14年度に完成します。この計画についてはどう考えますか。

村上町長 こうした施設が遠刈田にあれば、定住化促進のためにも非常に安心です。町内には蔵王病院などがありますが、観光地としての安心感をより高めるためにも、ぜひ医療施日本一元気な町を全国に発信設なども整備をお願いしたいと思います。とくに、高齢者のために眼科も加えてほしいと思います。

今後、取り組んでいく課題は何でしょうか。

村上町長 財政の立て直しなど前述した6つに加え、防災・減災対策、通学路の整備などで、より一層の安全・安心なまちづくり、環境基本計画策定、日本ジオパーク認定による環境保全の推進、そして定住促進です。日本一元気な町であることを、全国に向けて発信していきたいと思っています。

蔵王町の観光PRキャラクター「ざおうさま」が
2013 年3月に決まった


原稿元:株式会社仙台経済界 仙台経済界2013年5-6月号 http://www.senkey.co.jp/

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