特集

このインタビューは、仙台経済界2013年11-12月号に掲載された原稿をホームページ用に再編集したものです。

サービスの受け手から、提供者に。求められるのは事業の構想力
はなみずきの会 会長 武田 元氏

たけだ・はじめ
●1942年、宮城県柴田郡柴田町船岡生まれ。実家の米穀業を継ぐため仙台商業高校へ。丸紅仙台支店に入社後、東北学院大学経済学部へ入学。大学卒業後、高校教員の道に。加美農業高校、大河原商業、宮城農業高校、船岡養護学校、角田養護学校で勤務後、教職員が中心となって障害者雇用の場を作るため54歳で退職。「就職ができず、行き場のない卒業生を見ていて、自分たちで施設を作ろうと思ったのです。働くことが人間にとっての基本。ほってはおけませんでした」。●1979年、障害者の働く場所と共同生活の場を提供する「はらから福祉会」初の事業所である蔵王すずしろ施設長に。10年間勤務後、2006年はらから福祉会理事長に就任。はらから福祉会では、「たとえどんなに障害が重かったとしても、働きたい、働いて手にした給料で自分らしい生活を送りたい、という障害者の願い」に応えることを理念としている。そのために、利用者賃金(工賃)時給700円支給をめざしている。現在、蔵王すずしろの他、宮城県内、東京都内に10カ所の事業所などを運営、売上は5億円。職員90人、障害者305人が働いている。●2013年6月17日、はなみずきの会設立総会で会長に就任。柴田町在住。趣味はベガルタ仙台の応援。

「誰もが人として尊厳を保ちながら、安心して暮らし続けられる地域づくり」を基本理念とした、「蔵王福祉の森構想」に賛同して協力していくことを目的とした町民主体のボランティア組織「はなみずきの会」。その会長に就任した武田元氏に、より具体的な理念や活動、課題と展望などを聞いた。

人として生きていくために

はなみずきの会は、基本的にどのようなことを目指す組織なのですか。

武田会長 現在、医療法人社団リラの会常務理事で、社会福祉法人芽吹の富田正夫理事長や蔵王山水苑を運営する(株)Nコーポレーションの相澤国弘所長、はらから福祉会蔵王すずしろの小熊久男所長、七十七銀行の村山吉浩前蔵王支店長、せせらぎのさとの齋藤一章施設長、そして私も含め6人のメンバーによる蔵王福祉の森構想委員会を立ち上げ、何のために創り上げるのかということから議論を始め、これまでに2回の会合を開きました。理念とハード、そのためのシステム作りを行いました。はなみずきの会は、出来上がったその構想に賛同して、バックアップしていくためのボランティア組織なのです。構想は、難易度も質も高いものになると思いますが、組織、活動自体は制度にしばられず、自由な集まりでよいのではないかと考えています。

あるべき姿というのは、どのようなイメージですか。

武田会長 高齢者であること、また障害者であることを越えて、人として最後まで生きていくためには、どのような地域社会が求められるのかということです。人間的に生きていくためには、何が必要なのか、人間の存在そのものを論議していかなければなりません。高齢者や障害者は、単なるサービスの受け手ではなく、サービスの提供者、社会にとって必要な存在として生きていくことなのです。そのためには、医療法人社団リラの会が運営する介護老人保健施設のリラの郷や、来年4月に開所する構想の中核事業所となる芽吹の特別養護老人ホームも、現在は、国の制度の中で動いている施設ですが、それにとどまることなく、蔵王福祉の森構想の理念に近づける経営にすることが必要で、大きなポイントになってきます。もちろん、はらから福祉会が運営する、就労支援施設の蔵王すずしろも同様です。

蔵王福祉の森構想の理念で謳う、単なるサービスの受け手ではなく、サービスの提供者を目指す活動において、今、考えられる課題はなんでしょうか。

武田会長 老人福祉においては、認知症の方の作業まで含めて行うのか、そこが課題になります。また、事業所で従事する介護士や看護師の意識の改革です。現場が、いかに理想に近づけるかということです。

13年10月7日には、はなみずきの会会員による農作業を行いましたね。

武田会長 いまの特養や老健施設では、福祉というのは、何も出来ない人を助けるという考え方です。しかし、人間は、どういう時に活き活きとするのか、活き活きとした状態になるのかということを考えると、働いて、社会に役に立つということなのだと思います。自分の存在が認められ、感謝されることで報酬を得ることです。それで自分の生活を作り上げていくことなのです。農作業は、蔵王わくわくファームでの、ネギの皮むきでした。最も簡単な仕事ですが、とにかく大量ですから、皮むきをしてもらうと農家は大変助かるのです。そして、その一次産業から二次産業へ移行させていくことが次の段階です。北海道函館のトラピスチヌ修道院では、ミルクアメなど酪農、農産物などを加工して販売しています。認知症の方もその作業に携わっているのです。

13年7月8日の第1回ボランティア会議。
50人もの町民や関係者が参加した。

多種多様な人を集めること

その中で、はなみずきの会が求められるのはなんでしょうか。

武田会長 事業化できる構想力です。つまり、いかに販売できるものを作ることができるかということです。美味しく、値頃感があるものを作り出していくことです。

来年4月に、構想の中核施設である芽吹の特養が開設されます。

武田会長 その特養に、食品加工場や売店、そして菜園、畑などを作ることができれば素晴らしいなと思います。また、近隣の農家の方がこの特養の売店で農産物を販売しあうことも可能ではないでしょうか。全国的に見ても例がありませんから、大きな話題にもなります。

これらを実現するために、制度的な制約はあるのですか。

武田会長 高齢者や障害者個別の支援計画の立て方によると思います。歩行訓練のほんの一部に、ネギの皮むきや加工、販売を組み込めばよいと思います。ボランティアの方も、車いすを押したり、介助をすることが苦手な方もいます。でも加工だったら得意だよという方もいますから、多種多様な方々を集めることです。商品化して販売して、お金にすることが必要です。そのシステムをつくりだしいきたいと思っています。

蔵王わくわくファームでのネギむき作業


原稿元:株式会社仙台経済界 仙台経済界2013年11-12月号 http://www.senkey.co.jp/

PAGE TOP